比喩は、あるものを別のものに重ねて表す言い方です。説明しにくい景色や気持ちが、たった一つのたとえで急に見えることがあります。そこが比喩のいちばん面白いところです。
直喩・隠喩・擬人法は、いずれも比喩に関係する表現です。違いは、たとえ方にあります。
| 種類 | たとえ方 | 例 |
|---|---|---|
| 直喩 | 「ようだ」などを使い、たとえだと示す | 夜の校舎は、眠った獣のようだ |
| 隠喩 | たとえだと示す言葉を使わず、別のものとして表す | 夜の校舎は、眠った獣だ |
| 擬人法 | 人でないものに、人の言動や気持ちを与える | 夜の校舎が、目を閉じた |
比喩には、共通する特徴がある
「夜の校舎」と「眠った獣」は、もちろん別のものです。でも、暗く静まりながら、どこかに気配を残しているところが似ています。ただ静かなだけでなく、何かがひそんでいるような少しの緊張も感じられますよね。
比喩には、だいたい三つの要素があります。
- たとえられるもの:実際に表したいもの
- たとえるもの:その特徴を借りるもの
- 二つを結ぶ共通点
「声が鈴のように響く」なら、たとえられるものは「声」、たとえるものは「鈴」です。共通点は、澄んでいてよく響くことでしょう。
共通点は、文に直接書かれないこともあります。書かれていなければ、前後の言葉が手がかりになります。「鈴」から何を感じるかは一つに限りませんが、「響く」という動詞があるため、ここでは形や色よりも音に注目するのが自然です。
比べていても、比喩とは限らない
弟は兄より五センチ背が高い。
これは、二人の身長を事実として比べています。兄の特徴を借りて弟の姿を表したわけではないため、ふつうは比喩とはいいません。
また、「あの人は医師だ」のように、本当に医師である人を医師だと述べる文も比喩ではありません。隠喩と同じ「AはBだ」という形でも、AとBが実際に同じものなら、事実を伝える文です。
擬人法は、人らしさを与える比喩
風が「早く帰れ」とささやいた。
風は言葉を話しません。風の音を、人のささやきとして表しています。このように、人でないものを人のように扱う表現が擬人法です。広い意味では、擬人法も比喩の一つと考えられます。
ただし、「犬が走る」「花が開く」のように、そのものが実際にする動作を書いただけなら擬人法ではありません。人らしい気持ち、言葉、意志のある行動などが与えられているかを見ます。
比喩が伝えるのは、形だけではない
比喩は、見た目を分かりやすくするだけの方法ではありません。
彼の言葉は、冷たい雨だった。
ここでは、言葉の形を雨にたとえているのではありません。「冷たい」「体にしみる」「気持ちを暗くする」という雨の感じを借りています。言われた瞬間の痛さだけでなく、あとからじわじわ効いてくる落ち込みまで伝わってきます。
比喩を読むときは、何と何を比べているかに加えて、たとえるものが持つ印象にも注目します。同じ「雨」でも、恵みの雨として使われる場合と、冷たく暗い雨として使われる場合では、伝わる気持ちが違います。前後の言葉を見ると、たとえるもののどの特徴が使われているか分かります。

