歴史的仮名遣いとは、昔から受け継がれてきた仮名の書き方です。「思う」を「思ふ」、「今日」を「けふ」と書くように、現代とは異なる仮名の使い方が見られます。
読むときは、基本的に今の発音に直します。「思ふ」は「おもう」、「けふ」は「きょう」です。一字ずつ昔風に読む必要はないので、身構えなくて大丈夫です。
現代仮名遣いとの違い

現在、一般の文章で使われる現代仮名遣いは、現代の発音を基準にして書くのが原則です。一方、歴史的仮名遣いは、語の成り立ちや昔の書き方を受け継いでいます。
たとえば、現代では同じ「い」と読む音が、歴史的仮名遣いでは「い」「ゐ」「ひ」と書き分けられることがあります。
現代仮名遣い:いる、思い出 歴史的仮名遣い:ゐる、思ひ出
昔の仮名の違いには、かつて発音が区別されていた名残があります。ただし、歴史的仮名遣いは「ある時代の発音を、そのまま正確に写したもの」ではありません。発音が変わったあとも、書き方には古い形が残ったからです。
古文や古い詩を音読するときは、特別な指示がない限り、現代の発音で読みます。
よく出る読み替え早見表
| 区分 | 歴史的仮名遣い | 現代の読み |
|---|---|---|
| ゐ・ゑ・を | ゐる | いる |
| ゐ・ゑ・を | こゑ | こえ |
| ゐ・ゑ・を | をとこ | おとこ |
| 語中・語尾のは行 | かは | かわ |
| 語中・語尾のは行 | おもひ | おもい |
| 語中・語尾のは行 | おもふ | おもう |
| 語中・語尾のは行 | いふ | いう |
| 語中・語尾のは行 | まへ | まえ |
| 語中・語尾のは行 | かほ | かお |
| 長音・拗音 | かう | こう |
| 長音・拗音 | けふ | きょう |
| 長音・拗音 | てふ | ちょう |
| 長音・拗音 | きう | きゅう |
| 長音・拗音 | きやう | きょう |
| くわ・ぐわ | くわじ | かじ |
| くわ・ぐわ | ぐわいこく | がいこく |
| ぢ・づ | ふぢ | ふじ |
| ぢ・づ | はづかし | はずかし |
「ゐ」は「い」、「ゑ」は「え」と読み、言葉の中の「を」は「お」と読むものがあります。ただし、助詞の「を」は現代仮名遣いでも「を」と書き、発音は「お」です。
言葉の途中や終わりにある「は・ひ・ふ・へ・ほ」は、「わ・い・う・え・お」と読むことがあります。語の初めにある「花」の「は」や「人」の「ひ」まで変えるわけではありません。助詞の「は」「へ」も、単語の中の仮名とは分けて考えます。
「けふ」を「けう」と一字ずつ直すだけでは、「きょう」になりません。長く伸ばす音や拗音は、仮名の組み合わせごと読み替えます。「きやう」のように、現代なら小さく書く「ゃ」が大きく書かれていることもあります。
「ぢ」「づ」は「じ」「ず」と読む語が多くありますが、現代仮名遣いでも「縮む」は「ちぢむ」、「続く」は「つづく」と書きます。すべてを機械的に置き換えるのではなく、前後の意味や漢字から考えます。
読み方に迷ったら、古語辞典や対照表を見てください。全部を暗記しようとしなくても大丈夫です。「今日(けふ)→きょう」「蝶(てふ)→ちょう」のように、漢字と一緒に見ると分かりやすくなります。
歴史的仮名遣いがあれば文語?
歴史的仮名遣いと文語は、関係は深くても同じものではありません。
歴史的仮名遣いは言葉の書き方、文語は言葉や文法の組み立て方です。古い仮名遣いで現代語を書くことも、現代仮名遣いで文語を書くこともできます。詩が口語詩か文語詩かは、仮名遣いだけでなく、助動詞、助詞、語彙、文末まで見て考えます。
見慣れない仮名は、今の言葉に直してみる
「こゑ」なら「声」、「まへ」なら「前」と、今も使う言葉が見つかると、読み方も分かりやすくなります。漢字や前後の意味から語を考え、そのあとで「ゐ・ゑ・を」や語中のは行、長音や拗音を読み替えます。
「思ふ」を「おもう」と読めても、その文の意味を知るには、活用や助動詞の知識が必要なこともあります。仮名遣いの読み替えは、古い文章の中へ入るための入口です。読める形に直るだけで、遠かった言葉が急に近く感じられます。

