詩は「叙事詩と叙情詩と叙景詩」に分類できます。これらを見分けるポイントは、詩の内容です。
「叙事詩」は歴史上の事件や人物を書いた詩で、「叙情詩」は作者の心情を書いた詩で、「叙景詩」は自然の風景を書いた詩です。
ここからは「叙事詩と叙情詩と叙景詩の違い」について、さらに詳しく説明していきます。
読み終えた時、次のようになってもらいたいと思います。
- 叙事詩について知っている
- 叙情詩について知っている
- 叙景詩について知っている
- これらを見分けられる
叙事詩・叙情詩・叙景詩について
この記事のポイントは次のとおりだ。
- 叙事詩は「歴史上の事件や人物」を書く
- 叙情詩は「作者の心情」を書く
- 叙景詩は「自然の風景」を書く
- 多くの現代詩は叙情詩である
叙事詩について
叙事詩とは「歴史上の事件や人物について書かれた詩」です。作者の気持ちは、叙事詩には出てきません。
叙事詩の内容は次のようなものです。
- 英雄
- 伝説
- 神話
- 民族の歴史
この羅列を見て、違和感があると思います。実にその通り!
叙事詩の内容は【昔話】のような雰囲気があります。叙事詩は「昔よく書かれた詩」です。詩の源流といえます。
ホメーロスのオデュッセイア(英雄オデュッセウスの詩)や、ダンテの神曲(詩人が地獄とか天国とかに行く詩)など。
ところが叙事詩は小説へと変わっていき、姿を消しました。現代詩の叙事詩を僕は見たことがえりません。
叙情詩について
叙情詩とは「作者の心情について書かれた詩」です。ただし詩に作者の気持ちをそのまま書くわけではありません。(←ここが重要)
良い詩は作者の気持ちが読み手にやんわりと伝わる仕掛けになっています。もし直接的な言葉で気持ちを表現できるなら、詩である必要がなく、散文でいいからです。
直接的に気持ちを表現できる言葉には、特徴があります。
- 「〜い」「〜だ」で終わる言葉
- 「〜と思う」「〜と感じる」という表現
- 様子、行動を表す言葉
具体例でいうと、次のような言葉が気持ちを表す言葉です。
- 暑い
- 冷たい
- 楽しみだ
- 美しいと思う
- 悲しく感じる
- 嬉しい様子だった
また叙情詩は色んなテーマで書かれます。詩のテーマによって、詩の呼び方は変わります。【叙情詩の中の◯◯詩】といった感じです。次のとおり。
- 恋愛詩
- 哲学詩
- 自然詩
- 風刺詩
- 讃歌
- 挽歌
ちなみに、現代詩の多くは叙情詩です。
叙景詩について
叙景詩は「自然の風景を写生的に書いた詩」です。写生的とは、【見たままの】や【そのままの】という意味。
つまり、叙景詩は「あるがままの風景」を書いた詩です。
イメージをつけるために具体例を見てみましょう。
雨の中に
馬がたつてゐる
一頭二頭仔馬をまじへた馬の群れが
雨の中にたつてゐる
雨は蕭蕭と降つてゐる
馬は草を食べてゐる
(以下略)
出典:三好達治「大阿蘇」
叙景詩を読む上で注目すべきポイントは、天候・色・明るさです。次のように、叙景詩から【気持ち】を読み取ることができます。
- 晴れ →ポジティブな気持ち
- 雨 →ネガティブな気持ち
- 明るい色 →ポジティブな気持ち
- 暗い色 →ネガティブな気持ち
余談ですが
叙景詩が中学国語の参考書に、叙事詩・叙情詩と肩を並ばせて掲載されているのは、なんとも違和感だ。
どうやら「叙景」という言葉を文学に持ち込んだのは正岡子規らしい。(出典:『詩を書くってどんなこと?』平凡社)
さいごに
叙事詩・叙情詩・叙景詩について説明してきました。もう一度まとめておくと、次の通りです。
- 叙事詩は「歴史上の事件や人物」を書く
- 叙情詩は「作者の心情」を書く
- 叙景詩は「自然の風景」を書く
- 多くの現代詩は叙情詩である
叙事詩・叙情詩・叙景詩について分かってもらえましたか?少しでもお役に立てたなら嬉しいです。
参考書籍
この記事は【自由自在 中学国語】を参考にしている。
非常に詳しく書かれており、面白い参考書でオススメ。
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