表現技法は、名前を覚えるためだけのものではありません。同じ出来事でも、言葉の選び方や並べ方が変わると、見える景色や胸に残る気持ちまで変わります。その変化を味わうための手がかりが、表現技法なんです。
「ようだ」「名詞」「疑問符」などは、技法を見つける目印になります。でも、名前を当てたところで終わるのはもったいないですよね。その言葉が入ったことで、場面がどう見え、気持ちがどう動いたかまで読んでみてください。
主な表現技法の一覧

| 技法 | 基本的な意味 | 短い例 |
|---|---|---|
| 直喩 | 「ようだ」などを使って、二つのものを比べる | 湖は鏡のように光る |
| 隠喩 | 「ようだ」などを使わず、別のものにたとえる | 湖は空の鏡だ |
| 擬人法 | 人でないものを、人のように表す | 湖が静かに眠る |
| 反復法 | 同じ言葉や文を意図的に繰り返す | まだ遠い、まだ遠い |
| 対句法 | 形の似た二つ以上の句を対応させる | 昼は鳥が渡り、夜は星が渡る |
| 倒置法 | ふつうの語順を入れ替える | 忘れない、あの声を |
| 体言止め | 文末を名詞で止める | 窓の向こうに、白い月 |
| 省略法 | 文脈から分かる言葉をあえて書かない | もし、あの日に戻れたら—— |
| 擬音語 | 実際の音を言葉で表す | 雨がざあざあ降る |
| 擬態語 | 音のない状態や動きを言葉で表す | 星がきらきら光る |
| 反語 | 疑問の形で、強い肯定や否定を表す | だれがこの日を忘れられようか |
| 押韻 | 対応する場所に同じ音や似た音を置く | 風と歌おう/空へ向かおう |
比喩は、何かを別のものに重ねる
直喩・隠喩・擬人法は、比喩に関係する技法です。
湖は鏡のようだ。
湖と鏡は別のものですが、「平らで、光を映す」という共通点があります。このように、あるものを別のものに重ねて表すのが比喩です。比喩を読むときは、「何を」「何に」「どんな点で」たとえているかを探します。
文の形を変える技法もある
倒置法、体言止め、省略法は、語順や文末を変える技法です。
ふつうの語順:私は、あの声を忘れない。
倒置した語順:忘れない、私はあの声を。
倒置した文では、「忘れない」が先に示され、強い決意として伝わります。ただし、会話では語順が自然に入れ替わることもあります。語順が違うだけで、すべて倒置法になるわけではありません。
技法の効果は、作品によって変わる
「体言止めには余韻がある」「反復法は言葉を強調する」と覚えるだけでは、作品を読んだことにはなりません。何が目立ち、その結果どんな場面や気持ちが伝わるのかを考えます。
たとえば、「まだ遠い、まだ遠い」という反復は、目的地までの距離を強く感じさせることがあります。別の場面で「会いたい、会いたい」と繰り返せば、相手を求める気持ちが切実に伝わります。同じ技法でも、周りの言葉によって効果は変わります。
迷ったら、こんな順で読むと整理しやすいです。
- その文が表す場面や事実を確かめる
- ふつうの言い方と違う部分を見つける
- 言葉の意味、語順、文末、音のどこが工夫されているかを見る
- その工夫が、場面や気持ちの伝わり方をどう変えたか考える
技法名は、言葉の面白さに気づくための入口です。名前より先に、「この言い方、なんだか胸に残るな」と感じても大丈夫。その感じを、本文の言葉と結び付けられれば、表現の効果はちゃんと読めています。

