倒置法は、普通の語順を入れ替える表現です。最初に強い言葉が飛び込んできたり、最後まで読んで初めて意味が分かったりするので、驚きや緊張が生まれます。
忘れない、私はあの声を。
ふつうの語順に戻すと、「私はあの声を忘れない」です。述語の「忘れない」が先に置かれ、決意の強さが伝わります。
ふつうの語順に戻してみる

倒置法か迷ったら、いったん普通の語順に戻すと見えやすくなります。主語・目的語・述語の関係が自然につながるかを見ます。
倒置:見つけた、校庭の隅で小さな春を。
ふつうの語順:校庭の隅で、小さな春を見つけた。
「見つけた」を先に読むため、何を見つけたのかが少しの間分かりません。最後の「小さな春」に注意が集まり、発見した喜びが残ります。
語順を戻しても、元の文とほぼ同じ出来事を表せることが、倒置を見分ける手がかりです。ただし、並べ替えると細かな印象まで同じになるわけではありません。その違いに、倒置の効果があります。
会話の語順と倒置法
日常の会話では、言いたいことを先に口にして、あとから情報を足すことがあります。
来たよ、電車が。
この文は「電車が来たよ」と戻せます。作品の中で、電車が来た瞬間の驚きや勢いを表すために使われていれば、倒置法として読むことができます。
一方、会話のくせや言い直しとして語順が変わっただけなら、必ずしも表現技法を意識したものとは限りません。文章の中でその語順が目立ち、場面の伝わり方に働いているかを見ます。
句読点や改行だけでは決まらない
倒置法では、入れ替わった部分の間に読点や改行が置かれることがあります。しかし、句読点の有無は決め手ではありません。
遠くで鳴っている、祭りの太鼓が。
文末の「祭りの太鼓が」は名詞を含みますが、助詞「が」が付いた主語です。「祭りの太鼓が遠くで鳴っている」と戻せるので、注目するのは語順です。名詞に見える語が最後にあるという理由だけで、体言止めとは決めません。
前と後ろの両方が目立つ
倒置の効果は、「強調」の一語では説明しきれません。
帰ってきた、兄が。
「帰ってきた」が先に来ると、まず出来事の大きさが飛び込んできます。そのあとで「兄が」と分かるため、帰ってきた人物に注意が集まります。前後の内容によっては、驚きのあとに安心やうれしさが重なることもあります。
倒置法の効果を書くなら、普通の語順と比べると分かりやすいです。どの言葉が先に現れ、どの情報があとまで保留されたのかを示すと、驚き、緊張、決意など、作品に合った効果を考えられます。

